「パンダと漢方薬」


今年2月、上野動物園にパンダがやってきて以来、約半年が経過しました。

みなさんは、『日本に初めて来たパンダが風邪をひいたときに漢方薬で治した』
というエピソードを聞いたことはありませんか?

実は その漢方薬を処方したのは当診療所なんです。

ご存じない方のために、簡単にご説明いたします。(と言っても、僕も伝聞なんですけどね。)

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1972年、日中国交回復の記念としてランラン(蘭蘭)とカンカン(康康)が上野動物園にやって来ました。

この2頭のパンダは、中国からの親善大使として国賓扱いされ、政府から「決して死なせないように」
という特命が出された事もあり、上野動物園ではパンダ特別飼育チームが結成されました。

そして、来日10日目の夜に、カンカンが重い風邪をひいてしまいます。

当時、パンダは 生態の分からない非常に希少な動物であり、治療法が分からず、
安易に抗生物質を投与すると腸内細菌が死滅して生命を脅かすのではないかと途方に暮れていた時、
「パンダは中国から来たのだから漢方薬が良いのではないか?」という意見が挙がり、
すぐさま漢方薬を取り寄せて服用させたところ、見事、風邪が治りました。
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というものです。

そして、その漢方薬を処方した病院こそが、当診療所の前身『天心堂漢方診療所』なのです。

当時、うちの家族は(旧)診療所の2階に住んでおり、診療時間外でも電話が取れる状況でした。
(上野周辺で漢方薬を扱う店舗自体が少ない上に、夜中に電話を取れるのはウチだけです。)

初代院長である祖父が、診療を終えて少し遅い晩酌をしていた時に1本の電話が鳴りました。

相手は、上野動物園の関係者とは名乗らずに
「息子が急に風邪をひいてぐったりしているので助けてほしい」とだけ話してきました。
と言うのも、パンダの飼育は国家政策だったので、極秘にする必要があったからです。

この電話のやり取りには、ちょっとした笑い話があります。

(祖父)「息子さんの年齢を教えて下さい。」

(職員)「だいたい6歳くらいです。」 (本当は2歳でしたが、人間の年齢に換算したのでしょう。)

(祖父)「体重は?」

(職員)「40㎏です。」

その後、息子さん(?)の症状を詳しく聞いた後、

(祖父)「わかりました。では風邪の漢方薬を処方します。それにしても大きいお子さんですね。」

冷静に考えたら6歳で40㎏なんて普通は考えられませんが、祖父も疲れていて しかも酔っていたので、
職員の方は、割と簡単に誤魔化せたのではないでしょうか?
(うちの家系はお人好しで 人の話を信じてあまり疑わないもので・・・笑)

その後、すぐに職員の方が来院し、処方した漢方薬を持ち帰ってカンカンに飲ませたところ、
見事 元気になりました。

その時 処方した漢方薬こそが、今でも一番多く処方させていただいている『小葛湯』なんです。

余談ですが、この漢方薬を入れる箱の色から当診療所のイメージカラーを決めたくらい
思い入れの強い漢方薬で、私も風邪気味や、ちょっと疲れた時などに愛飲しています。

日中国交の危機を救った (?) パンダの風邪も治す『小葛湯』、是非お試しください。

 
2011/09/10更新


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