「僕の世界観」


HPを立ち上げて3か月が経過しました。
気がつけば、もう10月の後半ですね。

おかげ様で、ネットを見てご来所される方が増えられました。
さらに、気候が変わり体調を崩されてご来所される方も増えられたため、
なかなか日記を更新できませんでした。

この日記を楽しみにしてくださる物好きな方(失礼!)申し訳ございません。
これからは、できるだけ頻繁に更新していきたいと思います。


・・・ということで、本編です。

以前僕は麻酔科医でした。

麻酔科の存在意義は、手術を受ける患者様の不安を最大限解消させ、
安全かつスムーズに手術が行なえるようにすることだと思います。

日頃健康な我々は、自分が病気になって手術を受ける時の心境なんて
考えた事が無いのではないでしょうか。

病気が見つかり手術を受けるまで、病院の対応は無機質な「流れ作業」となります。

ある病気に対して手術が必要と判断されれば、医師は患者様に一通りの説明をし、
(承諾を得られ次第)直ちに手術の日取りを決めます。

患者様は、Xデーが来るまでに、身の回りの整理や心の準備をしますが、
その病気が緊急疾患であればある程、少ない時間を有効には使えません。

入院してからは、この「流れ作業」に拍車がかかります。

患者様の意思とは無関係にスケジュールが進行していきます。
そして、されるがままに手術当日を迎えるのです。

ここまで、 極端に言ってしまうと我々医療従事者(特に医者)は、
「個人」ではなく「病気」のみを見ているかもしれません。

「○○さんの(××病の)手術」ではなく、
「××病の(○○さんの)手術」になっているのです。

看護師が中心に「心のケア」に力を入れている施設もありますが、
残念な事に現代医療の現状では、「個人の感情」は重要視されません。

病院は良い手術や良い治療を効率的にすることを評価します。

どの患者様にも均一で良質な医療行為をしなければならない事を考えると、
それもある程度は仕方がないことかもしれません。

そのような現状の中、
僕は出来るだけ「患者様個人の感情」を尊重しようと思って仕事をしていました。

知り合いの看護師から、僕が担当する手術室の室内には他の人には無い
「ちょうワールド」があると言われたことがあります。

帝王切開術を受ける妊婦さんにオルゴールのCDを掛けたり、
子供の麻酔の時、麻酔のマスクにバニラエッセンスを付けたり、
リラックスしていただくために、患者様目線での説明を心がけたり、
などなど・・・。

自分が手術を受ける立場になった時のことをシュミレーションし、
自分が受けたら嬉しいようなサービスを常に考えていました。


以前、手術室に「お守り」を握って入室してくる患者様が何人かおられました。

そこから感染したり、その物自体が汚れたりする、などの理由で、
基本的にはお守りなどの私物は、入室後か、遅くとも麻酔が始まった後は、
手元から離れた所で預かり、手術後にお返しするということが多いのです。

でも、それではその方の気持ちを反映できないのではないかと思いました。

僕は、麻酔開始後も「お守り」を手の内か、それが無理な場合でも
必ず体の一部に接するように置くように努めました。

神にもすがる思いでこの日を迎えた患者さんの感情を考慮すると、
それが患者さんの望みじゃないかなと思うんです。

「ひとりよがり」と言ってしまえばそれまでですが、
こういう気持ちを忘れてはいけないと思いますし、
僕の世界観(ちょうワールド?)を貫いた大学病院時代を誇りに思います。


現在、大学病院時代の仕事とは全く異なる仕事をしていますが、
この「僕の世界観」は一生忘れずに今後も持ち続けて行きたいです。


2008/10/27更新


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