「風邪の話 その1」


先日、某医療系サイトを覗いていたところ、一般の方からの質問で、
「ナゼお医者さんは風邪をひかないのですか?」
というものがありました。

その方の息子さんがよく風邪を引いて小児科や耳鼻科に行かれるそうですが、
医者や看護師がウイルスたっぷりの空気の中にいてピンピンしているのを不思議に思われたそうです。

僕の経験談からこのご質問の回答をさせていただきますと、
結論から言えば・・・医者も(ごく普通に)風邪を引きます。

 

国家試験を受ける直前の医学生の生活は、
朝起きてから夜眠るまでず~っと、家か大学の自習室などに籠って勉強しています。

それはまるで、無菌室内に閉じこめられた、か弱き(?)ヒヨコのようです。

そんなヒヨコ達が、国家試験を合格して医者になり、
就職した病院に初出勤した時の事を想像してみてください。

バイ菌にとって、ヒヨコ達の体内は敵のいない楽園なのではないでしょうか?

 

ここで、少し昔話をさせて下さい。(笑)

 

経歴には載せていませんが、研修医一年目の時、僕は小児科に入職しました。

その際、先輩医師から、
「研修医一年目は、一年中風邪を引くと思いなさい。」
と言われました。

小児科に入院してくる患児のうちの大部分は『感染症』・・・つまり風邪です。

風邪にも様々な種類があり、各々のバイ菌に対して免疫がつくまでは、
一年中新しい風邪に悩まされる羽目になるのです。

小さい頃から漢方薬を服用しているから大丈夫だろうと思っていましたが、
僕も例外ではありませんでした。

風邪が流行すると、同級生のうちの誰よりも早く感染します。
(小児科医は流行に敏感なのです・・・笑)

そして、やっと治りかけた頃に新たな風邪が流行り出す・・・といった生活が一年中続くのです。

あまりに症状がひどいと、先輩医師の判断で強制休養となります。
(医師が院内感染の感染源となるのを防ぐためです。)
しかし、症状が軽くてもマスクは必需品で、いつも鼻をジュルジュルさせていました。

僕の状態を見て、怪我などの感染症以外で入院している患児から、
「せんせいはやくがぜなおしてね」
という手紙をもらったこともあります。
(「がぜ」というところが可愛いですよね?)

この手紙は今でも僕の宝物です。

 

・・・ともかく、
小児科医ほど過酷な状態では無いにしろ、医者は研修医時代に風邪を引くことで免疫をつけるのだと思います。

2008/8/22更新


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